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個性的なドラマーになるために ~後編~

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ウメです。

「戦略的切り捨て」を行うと、物理的にも精神的にも大きなメリットがあります。

まず物理的には、自分の得意な事や好きな事で勝負できるため、苦手な事や嫌いな事にわざわざ時間を使う必要が無くなります。この空いた時間を、得意な事・好きな事に丸々投資できるので、さらに自分の武器が磨かれていきます。

精神的なメリットは、苦手な事や嫌いな事を考えなくて済むという事です。言葉にすると簡単なようですが、煩わしい事を全く考えなくても良いというのは、かなりの「ストレス・フリー」につながります。これは人間関係と同じですね(笑)。

私自身も、元々は気が多い方で、ドラムに関しても、ストライクゾーンは広ければ広いほど「得をする」と思っていました。可能な限り幅広く知識を吸収し、なるべく「スキ」を作らない事が、プロへの近道であると考えたからです。

ところが、現実は全くの逆でした。それを初めて痛烈に思い知らされたのは、忘れもしない19歳の時、「吉祥寺クレッシェンド」でのライブの事。

恥ずかしながら、それまでの私は、自分のドラム・プレイには「超」がつく程、自信を持っていました。15歳でドラムを始めてからというもの、独学ですが練習に没頭し、すぐにプロを志すようになりました。そして18歳の時には、当時活動していたバンドで、高校生バンドの大会「YOKOHAMA HIGH SCHOOL HOT WAVE FESTIVAL ’97」(通称:ホットウェーブ)に出場して、全国大会の準決勝まで勝ち進んだ事で、完全に天狗になっていたのです(笑)。

高校を卒業し、イケイケムードの中で迎えたクレッシェンドでのライブ。その日の出演バンドは、自分たちも含めて確か4~5組だったと思いますが、私は、リハーサルでの対バンの演奏を観て聴いて愕然としました。出演ドラマー全員、私より上手くてカッコイイのです。しかも、僅差とかではなく、相当なレベルの高さです。

全く経験した事のない感覚に、私は焦りました。それまで、ライブの対バンで「上手いな」と思うドラマーを目にしてはきたものの、それはごく稀に見かける位のレベル。たとえどんなドラマーが出てきても、高校生同士では負ける気がしなかったのです。

ところが、フタを開けてみてビックリ。大学生や社会人バンドのレベルの高い事高い事(汗)。「さすがに高校の時とは違うな…」と、私は襟を正す思いでした。何しろ、出演者の中で自分がダントツでビリだと感じたのは、この日が初めてだったのです。そして私は、次のような事を学びました。

「練習しても練習しても、テクニックで言ったら上には上がいるな」
「もしもテクニックだけで全国のドラマーに順位をつけたら、自分は下から数えた方が早いな」
「自分はテクニック以外の分野で勝負しなければ、プロにはなれないな」

この時、私はある「戦略的切り捨て」を決意したのです。それは、

ドラマーとして、「テクニックを切り捨てる!」という大胆なものでした。当然の事なのですが、自分がヘタる程練習しても、超絶的・変態的に上手いプレイヤーというのは、いくらでもいるものです。「テクニックをまともに競っていては、他のドラマーたちに埋もれてしまう」という事実を垣間見た私は、その日を境に、目標を「テクニカルなドラマー」から「歌心のあるドラマー」へ、一気にシフトチェンジしたのでした。

後でリサーチしてみると、その日の出演者の中で、バンドの楽曲を作曲しているドラマーは、一人もいませんでした。つまり、バンドで作曲も担当していた私以外は、生粋の「テクニカル・ドラマー」だったのです。また、周りを広く見回してみても、作曲をメインで行うドラマーには、あまり出会った事がありませんでした。

「これはチャンス!」とばかりに、私は「作曲スキルを今まで以上に磨く事」と、「楽曲の中でヴォーカルを第一に活かすドラミング」に徹する決意をしたわけです。それからというもの、ドラマーとして自分のやるべき事や注力すべき事が整理され、自分の武器だけを磨いていく事に迷いがなくなりました。

もちろん、プロを目指す上で、最低限のテクニックは必要不可欠です。その上で、逆立ちしても勝てない市場には本格的には乗り出さずに、逆に競合の少ない自分だけの市場を見出して、そこで旗を掲げて勝負する。そう考えると、「戦略的切り捨て」とは、ビジネスと大いに似ていますね。


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